『不屈者』(後藤正治)

最近、ノンフィクション作家の後藤正治さんの著作(『咬ませ犬』『スカウト』『リターンマッチ』とか)を超面白く読んでいるのですが、その中の『不屈者』から気になったところを引用。

谷川流光速の寄せについて、「芹沢先生から示唆された点もあります」と谷川はいう。
終盤、幾通りか、勝ち筋が見えてくる。危険であるが最短の寄せコース、手数はかかるが安全勝ちのコースと、いろいろある。芹沢と話をしたとき、「最短がもっとも安全ではないか」といわれたことが耳に残った。
安全コースは、安全を選んだということで気が緩む。手数も多くなって、結果、その分、悪手を生みやすい。最短は、危険なコースをたどっていると自覚する分、より注意深くなる。また手数も少なくなるから、それだけ間違いも減るというのである。(P118)


あと、この『不屈者』には上の棋士谷川浩司さん(ちなみに上の「芹沢」は故・芹澤博文九段)プロ野球選手の森安敏明さん(故人)、ラガーマン村田亙さん、シンクロコーチ井村雅代さん、登山家の山野井泰史さんについての文章の五編が収録されているのですが、山野井さんについてググっていたらこんな記事を見つけたのでまた引用。

今、奥多摩内で引っ越そうとしているんですよね。新居といっても、ぼろい家だからペンキを塗ったりしているんですけど、今回失敗した中国の山で悪天候に遭ったとき、あの家どうなっちゃうのかな、と、ふと思ったんですね。ああ、今は死にたくない、と初めて思った。クライマーとしては、まずいですよ。だから今、ちょっと複雑です。人間に戻り始めて。
山野井泰史(クライマー) 指失っても単独登山 - asahi.com : スポーツ : コラム


「死にたくないと思ったらクライマーとしてまずい」って、「凄い」としか言いようがないですよね。


追記:下の商品画像を出すために「はまぞう」で「後藤正治」と検索したら
オトナアニメ Vol.10 (洋泉社MOOK)が出てきたんですけど、後藤さんが何か書いてるんでしょうかね(確かめる気力はない)。まあたぶん同姓同名の誰かだろうけど。


不屈者

不屈者

リターンマッチ (文春文庫)

リターンマッチ (文春文庫)

スカウト (講談社文庫)

スカウト (講談社文庫)

咬ませ犬 (岩波現代文庫―社会)

咬ませ犬 (岩波現代文庫―社会)