失敗して良かった、と言える人生を 『わたしの失敗』(産経新聞文化部編)

前のエントリで失敗をやらかしたつながりで。色々な人達の失敗談が語られていて面白かったんですが、やっぱりというか、水木しげる先生の話で「のんのんばあ」というお手伝いのお婆さんの影響でおばけや妖怪、あの世のことに興味を持ち、そこからさらに派生して「人間死んだらどうなるんだろう」ということに興味を持った水木先生がためしに弟を海に突き落として死なせようとして失敗した話が抜群でした。以下引用(強調部は私による)。

「家の近くに小さな船着場がありました。落ちたら水は深く、流れも速かったから、おぼれ死ぬかもしれないと考え、やつがこちらに背中みせたすきに強く押しました
うそだろ、と思うかもしれないが、本当らしい。
弟はぎりぎりのところで踏みとどまった。驚き、怒り、泣きながら反撃してきた。取っ組み合いになって、二人で地べたを転げ回っているところを、通行人の男性が発見する。男性は二人をようやく引き離して、家まで連れていってくれたという。
「親には怒られました」。(中略)以後、そのように大それた実験に手を染めたことはない、と胸を張る。(P152)


弟を突き落とそうと隙をうかがう水木少年……すごい画です。

わたしの失敗 (文春文庫)

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