Pressentiment triste(悲しい予感)『退出ゲーム』(初野晴)

わたしはこんな三角関係をぜったいに認めない。(P7)


私も認めない。


それはさておきこの本『退出ゲーム』は、表題作であり日本推理作家協会賞の候補作にもなった「退出ゲーム」など4編収録の短編連作集です。ネットのどこかで「米澤穂信とかQ.E.D.が好きな人は読んでみれ(大意)」という感想を目にしたので読んでみました。確かになかなか軽やかで面白かったです。
青春学園ミステリ?みたいな要素の他に、零細吹奏学部が謎を解決するたびに全国レベルの超部員を獲得していくというアストロ球団的な王道展開もありつつ、(前半の二編は微妙さがありやなしやという感じも)確かに後半の二編「退出ゲーム」と「エレファンツ・ブレス」はいい感じに社会派テイストであり、特に「退出ゲーム」はさすが賞レースの候補になるだけあって良かったです。


で、最初に引用した「三角関係」というのは語り手のチカ→(好き)→若い男性音楽教師の草壁先生←(好き)←幼なじみの春太という三角関係なんですけど、この設定(良い悪いはともかく)がこの連作短編集においてはあんまり意味がないように思えたのがちょっと残念でした。もちろんこの続きがあるなら、男の春太が男の草壁先生を好きになった理由とか、昔デカいコンクールで入賞するなど指揮者として将来を嘱望されていたという草壁先生がなぜか高校の先生をやってる理由とかが描かれると思うんですけど、なんだか個人的にはなんかそこらへんを描かれても面白くならなそうな、悲しい予感がしています(もちろんその私の予感の斜め上を行くような二つの「理由」が描かれるのを、期待しているんですけれど)。


退出ゲーム

退出ゲーム