降臨賞感想、HIDEKIの気持ち、あるいは小説の登場人物に作者の考えを言わせること

「たいていの宗教に『悪魔』っているだろ。自分らの都合の悪いことを押しつけられる悪者がいないとやっていけないんだよ人間って。生存本能の一変形なんだろうけどな、人類が滅亡するんだとしたら理由はたぶんそれだよ」
秋山瑞人『それ以外のことについて言えば、』


書こう書こうと思っていたら贔屓にしている種牡馬の産駒が大活躍したり平日になったりで遅れたが、降臨賞について。
私も(主催者xxさんほどではないだろうけど)ちょっと悩んだ。具体的に言うと二点。気に入らないと思った他人の言動に対して揚げ足取りのようなエントリやコメントを書いてしまったことと、私が降臨賞に投稿した作品に対する評価についてだ。
一点目については特に付け加えることはない。あれは良くなかった。今まではできていた我慢ができなかったわけだし、何よりつまらないことを書いた。それだけだ。そして二点目については少し説明を加える必要があるだろうから少し詳しく言うと、*1私の投稿作品がはからずも、おそらく「質問者一人にとって稀少でありさえすればよい内輪ネタの作品」として評価(記憶)されたのであろうということ、そしてそれが「深堀骨」「海老」というキーワードによって明示されたことだ。念のために言っておくと、(明示されていた基準だったか云々は私には関係ないので、その限りにおいて)その評価(記憶)自体に間違いはなく、xxさんに全く非はないし、評価(記憶)してもらったこと自体は嬉しく思っている。つまりは私の(自意識の)問題だ。
さらに詳しく言うと、「はからずも」というのは、私は誰が主催者でもあれとほぼ同じ内容のものを書こうと考えていた(「空から女の子が降ってくるオリジナルの創作小説」というのを読んだ瞬間に仮タイトル*2を思いついた。証明はできないが……)からである。しかし「内輪ネタの作品」。他人にどう思われようが少ししか気にならないが、私があんな中途半端な内輪狙いの作品を書くような私であったことには耐えられない。ではそういう気持ちはなかったか?上に書いたように、なかった。なかったはずだ。
だけど、あの海老は何だ?
以下は何の証拠もない言い訳になる。ここまで来るともはやあれを書いた私にしかわからないし、もう誰にもわからないままでいてほしいことだが、海老はカモフラージュだった。別に海老でなくとも良かったのだ。いったんキャトルミューティレート済の牛と書いて「ちょっと犬と被るな」と思ってやめたりカントリーマアムやほうじ茶と書いて「ただ手近にあるもんってだけじゃねえか」と思ってやめたりもした。なのに海老。なぜに海老。ここに海老。そこに海老。どこに海老。うちわ海老*3。海老にこんなに苦しめられるとは。耐えられない。あの海老が偶然だった(少なくとも書いている時はそういう意識はなかった)なんて、誰が信じてくれるだろうか?まず海老が、いや私が信じられないし、頭からジャンパーをかけられた私が俯いて両の鋏を、いや両手を前に出しても誰も、何もしてくれない。私はどうすればいいだろうか?


http://d.hatena.ne.jp/g616blackheart/20090111/1231584312
降臨賞作品個別感想1 - ワンショット・ワンキル猫柳


それについて考える前に、悪意の話をしようと思う。悪意の反対語は何だろうか?善意か。個人的には誠意も近いと思う。降臨賞に向けられた悪意についてはもう十分堪能したのでいいとして、上のリンク二つは間違いなく降臨賞に向けられた善意であり誠意だろう(お二方に「善意ですね」とか言ったら除夜の焼き土下座を食らいそうだが。生意気を承知で書かせてもらえば、途中で終わって当然ぐらいの気持ちで気楽にやってほしいと思う)。
xxさんではないが、私にも自らに架している(そして普段は忘れている)いくつかの戒めのようなものがあり、その一つに「ニュートラルであれ」というのがある。さて、私はどうすればいいだろうか。ここにはかつて悪意があり、そして善意があり、誠意がある。そして「ニュートラルであれ」。一つ考えついたのは、降臨賞に対して、悪意でも、善意でも誠意でもないものを見せよう、ということだ。
アイディアはある。確か一連の議論の最後のほうで、誰かが誰かに対して別の人力検索の文芸イベント?に投稿する作品の中で、その誰かの主張に対する自分の意見を登場人物に言わせる、という手法の作品を投稿していた。われらが森博嗣先生はインタビューか何かで「登場人物の意見=森の意見と考える読者が多いんですけどそう思ってたら大間違いですよ(大意)」みたいなことを言っていたが、最近(私の中でも)大人気な海堂尊先生あたりはその逆で目茶苦茶自分の意見を登場人物に言わせている。私は思う。「ニュートラルであれ」。


『降臨賞は二十一世紀に羽搏く軍鶏になれるか?(降臨賞全作品二行レビュー)』 - 寿司ゼリー - 深堀骨部

*1:評価といえば、別に気にしていないが、「卑劣さに惚れました」というコメントを「卑劣(いい意味で)」ということか、と解釈した結果、読者に「最低(いい意味で)」と書かれた大和田先生の気持ちがちょっとわかったりというのもあったけれど

*2:深堀骨」先生の某作品のタイトルをもじったもの

*3:「内輪ネタだけに!」と思いきや、そういう種類が本当にいる