犯人の人生の物語/『ルピナス探偵団の憂愁』(津原泰水)
「勝手な理屈だ。まさに物語ですね」
「物語ですよ。すべては物語だ――面白いか、つまらないかの違いだけで」(P126)
私がミステリに期待するもの、といえば動機であり、動機とは犯人の人生であり、犯人の人生とは動機であると私は思うのですがそれはともかく*1、『ルピナス探偵団の憂愁』。
もちろん『ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫)』の続編です。さすが津原泰水というか、「ぜひ『大女優の右手』レベルで」との麗しい歓迎ゲートを用意した担当者グッジョブというか、とにかくどの作品も素晴らしかったです(特に各編のラストが!)。特に「動機」的には、物語に溺れた大学教授と祀島くんが対決する『犬には歓迎されざる』あたりなんか読んでてしあわせでした。収録されているのは、帯に書いてあるからいいだろう、摩耶の死と追憶『百合の木陰』、前述の『犬には歓迎されざる』、合コン相手に四年越しの疑惑『初めての密室』、ルピナスの苑で起きた殺人・そして四人の誓い『慈悲の花園』の四篇。摩耶の死から遡っていく構成の妙が、憂愁を誘います。
- 作者: 津原泰水
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/12
- メディア: 単行本
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*1:近年だと『サクリファイス』『告白 (中公文庫)』『さよなら妖精 (創元推理文庫)』『蛇行する川のほとり (中公文庫)』『四季』あたりの「動機」が好みです