犯人の人生の物語/『ルピナス探偵団の憂愁』(津原泰水)

「勝手な理屈だ。まさに物語ですね」
「物語ですよ。すべては物語だ――面白いか、つまらないかの違いだけで」(P126)


私がミステリに期待するもの、といえば動機であり、動機とは犯人の人生であり、犯人の人生とは動機であると私は思うのですがそれはともかく*1、『ルピナス探偵団の憂愁』。
もちろん『ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫)』の続編です。さすが津原泰水というか、「ぜひ『大女優の右手』レベルで」との麗しい歓迎ゲートを用意した担当者グッジョブというか、とにかくどの作品も素晴らしかったです(特に各編のラストが!)。特に「動機」的には、物語に溺れた大学教授と祀島くんが対決する『犬には歓迎されざる』あたりなんか読んでてしあわせでした。収録されているのは、帯に書いてあるからいいだろう、摩耶の死と追憶『百合の木陰』、前述の『犬には歓迎されざる』、合コン相手に四年越しの疑惑『初めての密室』、ルピナスの苑で起きた殺人・そして四人の誓い『慈悲の花園』の四篇。摩耶の死から遡っていく構成の妙が、憂愁を誘います。


ルピナス探偵団の憂愁 (創元クライム・クラブ)

ルピナス探偵団の憂愁 (創元クライム・クラブ)