『少女は踊る暗い腹の中踊る』(岡崎隼人)

少女は踊る暗い腹の中踊る (講談社ノベルス)

少女は踊る暗い腹の中踊る (講談社ノベルス)


第34回メフィスト賞受賞作。メフィスト賞ノワールときたら当然舞城王太郎なわけで、
舞城信者な私は読むまえから貶してやろうと思っていたけど読んでみたら意外とひどくなくてがっかり。


といっても、評価すべきはトラウマとか殺人いっぱいで夢見の悪い小説を一応最後まで読ませたという点と
作者が若くて男前だということぐらいで、多分ものすごい編集者の勘みたいなので先物買い受賞させた
のだと思う。もしかしたら次の作品で化けるかもしれない(少なくとも文章は上手くなる)し。
なにぶんこういったジャンルの作家で若くて男前というのはたいへんな希少価値*1なので、
ぜひとも作者には頑張っていただいて、もっと底意地の悪い小説を書いてほしいと思う。


俺は歌を思い出す。あんなこといいなできたらいいなあんな夢こんな夢いっぱいあるけど……。俺はかつてマンガの王様として君臨したことがあってその当時は本棚に千二百冊のコミックスを揃えてあった。『ドラえもん』『のび太』『しずか』『スネ夫』『ジャイアン』は一時期俺のイマジナリーベストフレンドだったのだ。俺は≪どこでもドア≫が欲しかった。≪タイム風呂敷≫が欲しかった。何よりドラえもんが欲しかった。ドラえもんのいいところは押し入れをベッドに使ってるところだ。隣で寝ているんじゃなくて押し入れに控えているなんて非常に愛らしいじゃないか?俺はドラえもんが寝た頃を見計らって押し入れを開けてドラえもんの寝顔を眺めるところを想像する。ドラえもんが自分の押し入れの中で寝ている。素晴らしい。ホンワカパッパ・ホンワカパッパ・ドラえもん
舞城王太郎煙か土か食い物 (講談社文庫)』P102より

これくらいの文章は書いてほしかった、ということで引用。

*1:それにしても、西尾維新はなぜ全く顔を出さないのだろうか?