『時雨蛤日記』(深堀骨)

ミステリマガジン1993年2月号掲載。『白熊座の女は真夏の夜にここぞとばかり舌を鳴らす』で「不慮の事故によって急逝された作家」として登場する西瓜、いや西爪一馬先生の作家生活を西瓜、いや西爪先生の日記形式で綴った作品。
登場人物は西瓜、いや西爪先生とその「愚妻」、お隣の桜さんとその奥さんとその飼い犬でポメラニアンの「蝙蝠安」、そして西瓜、いや西爪先生の妹のチメ子とその息子の弾正。
で、妹のチメ子・弾正母子(「父親は何年か前に脳味噌にアトピーが出来て死んでいた」)が西瓜、いや西爪家に転がり込んできて、おまけに海外放浪癖のある大学生の弾正はオッケペケ共和国だかオッペケペ共和国だかに行ってきてからおかしくなってしまったようで怪しく、「生きるということとはどういうことであろうか」と考えが浮かぶも答えが出ず、原稿は進まず、『濡れ濡れレオタード教室・早紀の土踏まず』というヴィデオを借りるもブラウン管には「ふたりの羽織袴に二本差しの侍が城の石垣の前で対話をしている図」しか映らず、蝙蝠安は消え、「○月×日 死ぬかと思った。」、明かされる真相、進む執筆、西瓜、いや西爪先生死す、というのがあらすじ。
とても10年以上前に書かれたとは思えないというか、受賞第一作でもう鉄板の伝聞形式が完成していたのかよというか、とにかく良かったです。【A】【心】


(評価は【心】システム@リンドウさんによる。なお、本作の【心】については受賞第一作だととうことを考慮しました)