『八本足の蝶』(二階堂奥歯)
自殺してしまった編集者、二階堂奥歯さんのweb日記と彼女に関わった人達*1が寄せた文章を本にしたもの。ともすれば、自殺前に書かれたこの文章(以下引用)
最後のお知らせ
二階堂奥歯は、2003年4月26日、まだ朝が来る前に、自分の意志に基づき飛び降り自殺しました。
このお知らせも私二階堂奥歯が書いています。これまでご覧くださってありがとうございました。
(P411)
ばかりに目が行きがちだが(確かにすごいけど)、すごいのは彼女の日記である。
私は読んでいて、正直「よくこんな人がいたものだ」と思った。
享年25歳ということで、確かに若すぎる死、夭折ではあったろう。
しかし、逆に25年もこの世にいることができたというのは、彼女の優秀さではないか。
そんなことをぼんやりと考えた。
最後に寄せられた文章の中で一番良かった「雪雪」という人のものを引用。
奥歯は街で偶然ぼくの姿を見つけるといつも、すごい勢いで走ってきた。整わない息のまま「雪…雪さん……こんにちは!」と言うのだった。
彼女はぼくの心の中で、幸運や希望という概念のすぐそばに住んでいたので、背後でいきなり走り出すあぶなっかしい靴音を聞きつけたりすると今でも、ぼくの心はぱっと明るくなることをやめない。
(P423)
- 作者: 二階堂奥歯
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2006/01/01
- メディア: 単行本
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