自分の父親が殴られている姿を見ること

先日ラスベガスで行われた格闘技イベント、PRIDE.32〜THE REAL DEAL〜のヒョードル戦で一本負けしたマーク・コールマンは試合後、観戦に来ていた自分の子供二人をリングに上げた。そのことについての話題がヒョードルの試合後会見で出たときに、それを近くで聞いていたフィル・バローニ第三試合で西島に勝利)が口を挟んだ際のコメント。

――通常、リングの上に子どもが上がるようなことはない。今回、コールマンの子どもたちがリングに上がって泣いていたことに、何か居心地の悪さを感じなかったか?


ヒョードル 確かに、居心地が悪かった。自分の妻も、私の試合のときはいつも泣いていますから。コールマンの子どもにとって、父親のあのような姿を見ることはショックだったと思います。


(ここで、会見を聞いていたフィル・バローニが意見を挟む)


バローニ コールマンにとって、子どもが彼の試合を見るのは、とても意義のあることだったんだ。コールマンはずっと日本にいたから、子どもたちは自分の父親が何をやっているのかよく分かっていなかった。今回ようやく、子どもたちに自分の戦う姿を見せる機会が得られたので、そうしただけだ。確かに、不運にして彼は負けてしまったが、それでも子どもたちにとって自分の父親がファンからの歓声を受けてリングに上がる姿を見たのは、とても意味があったと思う。コールマンにとって、子どもはすべてなんだ。その子どもと、この貴重な瞬間を分かち合いたいと思うのは当然だろ。だからオレは、そもそもどうしてそんな質問が出るのかすら分からない。
 確かに子どもにとって、自分の父親が殴られている姿を見るのはつらいだろう。だが、人生ってのはつらいもんなんだ。それに自分だったら、あれだけ殴られながらもちゃんと生きてリングから降りてきた姿を見たら、絶対にそのことを誇りに思い、尊敬すると思う。しかも相手は、世界最強の男だったんだぜ。コールマンの子どもたちも、将来父親の凄さを理解し、自分たちも強く生きていこうと思えるはずだ。オレはそんなコールマンの決断を、心から尊敬している。
スポーツナビより