WBA世界軽蝿級王座決定戦と板垣先生

試合自体を観ていないので内容判定その他についてはニンともカンともなのですが、速報を読む限り、負けられる試合を落とせなかったなあ、という印象。
今回世界初挑戦かつ初めての真の世界ランキング上位ランカーとの対戦で、最後まで倒れず頑張ったのだから負けてもキャリアにそう瑕は付かなかったはずなのにホームアドバンテージ発動で大勝利、というおよそ考えうる勝ち方の中では最悪の勝ち方をしてしまったわけで、勝ったのに追い詰められてる感じの亀田(長兄)さんの今後が心配です。


また、というかここからがメインなのですが、亀田兄弟に対して

 「僕はむしろ、彼らが負けた時に何を見せるのか、というのを期待しているんです。でも、それをどこまでも裏切ってほしいですね。無敗のまま引退したらカッコいいじゃないですか。それくらいやってほしい。そして、最後まで生意気でいてほしいですね」
スポーツナビより


と仰っていたわれらが板垣恵介先生*1も、おそらく観戦していて最終ラウンド終了後には「負けた時に何を見せるのか」という期待に胸を膨らませて亀田家に毒と果糖を送りつける準備をしていたはずで、そんな板垣先生の期待と好意を裏切ったジャッジの罪は重いッ!


追記:板垣先生はあるボクサーについて著書『板垣恵介の格闘士烈伝(グラップラー)』の中でこう書いている。長いけど引用。

心に残っている選手なら、相手の足にしがみついてまでダウンを耐えた輪島功一と、鮮烈な印象だけを残して去っていった大場政夫。そして……、村田英次郎。
 世界王座に4度挑戦したのかな。その時代を代表するバンタム級王者、ルペ・ピントールとジェフ・チャンドラーに挑戦し、2回連続引き分け。
 このときばかりは、なぜ地元判定がないんだと憤慨した。あの2試合は、村田が勝っていたといっても、誰も文句を言わなかったに決まっている。
 ピントールなんて、あのカルロス・サラテを破ったチャンピオンだよ。
 村田英次郎、なんでお前が世界チャンピオンになれなかったんだ。彼より、ボクサーとしての実力、完成度とも劣る者でも、世界チャンピオンの座を射止めた選手は、いくらでも存在する。
 その多くのチャンピオンより、村田英次郎はチャンピオンに相応しい男だった。ボクサーとしての完成度は、ついさっき褒め称えたロイヤル小林より、全く上だ。
 外見はぜんぜん強そうじゃない。男前だけど、青白い顔して。こんな青白い奴が、大丈夫か? って観客に思わせてしまうような青年がね、あのピントールと、どっちがチャンピオンか分からない試合をやってのけてしまった。
(中略)
 ジュニアバンタムに落とせば、あるいはジュニアフェザーに階級を上げれば、いつでもチャンピオンになれるといわれていた村田は、世界のベルトを巻くことなく、リングを降りた。2度の引き分けのあと、世界戦2連敗。結局、彼はバンタム以外の王座に挑むことはなかった。
 村田英次郎。無冠にして最も世界レベルに達していた日本人ボクサー。
 彼がボクサーを志したのは、『あしたのジョー』の矢吹丈に憧れていたからだそうだ。減量に苦しみ、苦しみぬいた矢吹丈が戦っていた場所が、バンタム級だった。
 世界チャンピオンでもない、世間の記憶からも末梢されている一人のこういうボクサーがいたことを、俺はどうしても書きとめておきたい。


やはり板垣先生は熱い。なお、この村田英次郎 v. ルペ・ピント−ル戦の一戦目はボクシングファンの間では伝説的な名勝負らしく、ビデオにもなっている。



板垣恵介の格闘士烈伝(グラップラー)

板垣恵介の格闘士烈伝(グラップラー)

*1:「でも」以降「それくらいやってほしい」まではリップサービスなのではないか、という気がして怖い