ダメだよ!もっと自分の意見を言わなきゃ!でも、幸せにおなり『とらドラ!』シリーズ(竹宮ゆゆこ)

「――なあ、」
「なんだよ、やるんならひと思いにやってくれよ。俺ほんとのこと言うと注射って苦手なんだからよお」
「記憶を飛ばした後遺症でイカレちまったオヤジの話を憶えているか」
 どうして今になってこちらを不安にさせるような話を蒸し返すのか――町田はイズミをにらみつけたが、予想外に真剣な眼差しに射すくめられて言葉を失った。
「お前にあんなふうになってほしくないし、お前なら大丈夫だと信じてる」
 町田は理解した。
 不安なのは、自分よりもイズミの方なのだろう。
「この先、お前が何かヘマをやらかすことがあったらそれはお前の責任だし、何事か成し遂げたとしたらそれはお前の手柄だ。そのことだけは、忘れないでくれ」
 町田は、満面の笑みを浮かべて答えた。
「無理だね」
 イズミは呆気に取られ、しかし自分の手の中にある注射器を見つめて苦笑する。


秋山瑞人『それ以外のことについて言えば、』


久々に本気で行間を読みました。


既刊は1〜9巻とスピンオフ1冊。あらすじ等は累計245万部突破と聞いて悠然と割愛しますが、結局のところ、面白く読めてるのは地の文が好みだからだと思います。いやあ、文体って大事だなあ。来年に出るであろう10巻のテーマもおそらく私の好きなテーマ「人のせいにしないこと」であろうし、楽しみです。おわり。


以下余談。わびしい話で恐縮ですが、私はミステリとかを読んでいて、登場人物の言動に(傲慢にも)稚拙だなあと感じる点があると、私の中の修造が「ぜんっぜん動機伝わってこない!もう1回!」やら「はい今失敗した!今君の計画失敗したよ!」 やらと、大変やかましいのですが、同じ稚拙だと感じるのでもこの『とらドラ!』のような、いわゆるヤングの色恋沙汰が絡む小説だと、私の中の修造が「はい今終わった!今君たちの恋終わったよ!」とか言わないで大人しくしてるのは、拙くも色々悩んだりするキャラクターがなんだか生々しくて、私の中の修造にはそんなこと言えないからなんだと思います。

そして同時にそういう風に考えるのは、まさかとは思わなくてもその「生々しいキャラ」というのはあなたの想像上の存在にすぎないのではないでしょうか、もしそうだとすれば、あなた自身が統合失調症であることにほぼ間違いないと思います、あるいは、その「生々しいキャラ」は実在して、しかし客観的に見て生々しい描写は全く存在せず、すべてはあなたの妄想という可能性も読み取れます、この場合も、あなた自身が統合失調症であることにほぼ間違いないということになります、と私の中のDr.林が言っていたりしますけれど、私は元気です。
最後にもう一つ、今日はクリスマスだということで、道行くカップルを見るたびに私の中のギイ先生がいい笑顔を浮かべながら「幸せにおなり」とつぶやくわけですが、『とらドラ』の彼氏彼女たちにも同じ言葉を贈りたいです。メリークリスマス。


とらドラ!〈9〉 (電撃文庫)

とらドラ!〈9〉 (電撃文庫)