ただの投手ではなかったんだぜ、5年前も。

プロ野球新人選択会議(ドラフト会議)の大学生・社会人ドラフトは19日、東京都内のホテルで行われ、1巡目で東洋大大場翔太投手の抽選に外れた日本ハム多田野数人投手(元3Aサクラメント)の交渉権を獲得した。(中略)米大リーグ経験のある多田野を指名。「ただの投手ではない」と得意の駄じゃれを交えて期待を寄せた。 5年前のドラフトでは肩の故障などを理由に指名されず、米国へ活躍の場を求めた右腕。梨田監督は「経験のある投手がほしかった」と話した。
SANSPO.COM - 日本ハム・梨田新監督、多田野は「ただの投手ではない」


「5年前のドラフトでは肩の故障などを理由に指名されず」のなどの部分の理由が「アッー!」というはてなキーワードと関係しているのは既に常識ですが、そんな風に色々あった多田野が日本球界入りということで、素直に良かったなと思います。以下思い出。


私が投げてる多田野を観たのは彼が大学4年の秋、確か都内で土曜日に何か予定が入っていたのに急にそれがご破算になってしまい、さてどうしたもんかと考えていたら、たまには神宮で六大学(野球)でも観るか、というナイスアイデアを思いつき、いざ神宮球場に行ってみたらやっていたのは早稲田・立教戦、どうやら早稲田の先発は和田毅(その後プロ入りしてルーキーイヤーから今年まで5年連続2桁勝利)らしい、特別指定席1300円もバックネット裏のわりかしいい席だし、これ来て良かったわあという試合の立教の先発が多田野でした。
コントロール良いしとにかく三振をバンバンとるよ、というのが風の噂だった和田はその日は調子が悪かったらしく、勝負どころで真っ直ぐが高めに抜けていたりと明らかに制球に苦しみ、四球を出したりヒットを打たれたりしながらも、独特のリリースが見づらいフォームと変化球(たぶんチェンジアップ)で打たせてとる、いわゆる「悪いなりに抑える」というピッチングで、さすがにいいピッチャーだなという印象でした。
一方の多田野はというと、こちらもリリースが見づらいフォームから投げ込まれるスライダーがとにかく素晴らしく、特に座っていた席からよく見えた左打者へのスライダーはものすごい曲がりとキレで、思わず見惚れてしまうほど。真っ直ぐに球威もあったし、当時は確かベイスターズに入団予定だったので、「これはただのピッチャーじゃないぞ!」とか「これはひょっとするとひょっとするぞ!」と一人で内心盛り上がっていました。
試合はというと投手戦で、立教がランナーを出しながらも得点できない間にいつの間にか早稲田が多田野から2点取って和田が完封勝利、多田野は完投負けだったのだけど、その試合でなにより印象に残ったのは多田野のピッチングだった。梨田監督、多田野はただの投手ではなかったんだぜ、5年前も。

米球界で5年過ごし、日本ハムから1巡目指名を受けた右腕の多田野数人は「指名されて大変うれしい。高い評価をしていただいた。前向きに考えている」と、やや硬い表情に喜びをにじませた。
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