『どんがらがん』(アヴラム・デイヴィッドスン)
- 作者: アヴラム・デイヴィッドスン,殊能将之
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2005/10/26
- メディア: 単行本
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「奇想コレクション」の名に相応しい、素晴らしい一冊でした。以下は各作品ごとの感想。
- ゴーレム
いきなり飛び道具かよ!正直理解に苦しんだけど、ゴーレムと老夫婦のすっとぼけた掛け合いはナイス。ゴーレムに向かって「それはもう聞いたよ、さっき聞いた」ってねえ。
- 物は証言できない
お次は社会派っぽい話。歪んだ社会から搾取してきた男に現実は微笑まない。最後の切れ味は相当なもの。
- さあ、みんなで眠ろう
せつなく、悲しい終わり方のSF。救われない種族たちね。
- さもなくば海は牡蠣でいっぱいに
ファードさんの博学趣味からの狂気への美しい飛躍。飛躍した先に待っていたのは……ひどいなあ(褒め言葉です)。
- ラホール駐屯地での出来事
テクニカルなミステリ。やっぱりホラ話はいいなあ。殊能センセイの解説によると「結末について少々解説が必要」だそうだが、結末丸飲み派にはそんなもの必要ないのだ。
- クィーン・エステル、おうちはどこさ?
ちょっとブラックなおばさんのほのぼのとした日常。
- 尾をつながれた王族
最初は何かの比喩なのかなと思ったけど、おそらくそういう読み方は適切ではない。
「奴隷は奴隷だ。尾をつながれたものたちが王族なのだ」
- サシェヴラル
全体を通して不穏な空気が流れる、なんともコメントしづらい作品。(解説を読んで)「わざとわかりにくく書いてあるシリーズ」て。
- 眺めのいい静かな部屋
いいなあ。最後の「オチ」がたいへん良かったです。
- グーバーども
「ホラ話が一人歩きをしてそのうち自分のところにやってくる」系の作品。回想形式であるのもいい味を出している。
- パシャルーニー大尉
けっこうありがちなお話。でいいんですよね?と確認したくなる、異色なデイヴィットスンの作品群のなかでは異色の作品。全体のバランスを考える殊能センセイの心遣いを見よ。
- そして赤い薔薇一輪を忘れずに
個人的には一番の収穫。溜め息が出るような切れ味のオチ、そして動機。究極の9ページです(臆面もなくこういうことを言わせる傑作)。
一見ロードムービーふうだが、違うのだろうしよくわからない。これが幻想なのだろうか?とても不思議な感じだ。最後まで地の文の凶暴な力にひきずられてしまった印象。ナポリ。
- すべての根っこに宿る力
これもけっこうテクニカルなミステリ。動機がとんがっている。終盤の署長が格好良いです。
- ナイルの水源
悪くはないのだけど、切れ味のある短編を続けて読んできたせいか、いかんせん長く感じてしまう(実際長いのだけど)。というわけで読むほうがスタミナ切れなので、そのうち再読しますということで。
- どんがらがん
同上。軽く読んだ限りでは、確かに解説の通りスラップスティック。