チェンジアップを、もう一球

高校のとき、体育の授業で卓球があって、卓球部とテニス部のAグループ・動ける素人のBグループ・動けない(動かない)素人のCグループ・ドジっ娘のDグループという4リーグ制のもと、みなで汗を流していた。私はBグループだったのだけど、ある日、わざとネットに当てて相手のコートに入れるというテクニックが誰からともなく発生、私を含めたBグループの一部で流行し*1、決まると相手が「おっとっと」と前につんのめることから「チェンジアップだ」などと言ったりして、ちょっと盛り上がっていた。しかし、なんか変な回転をかけたり一球打つごとにドン!と踏み込む足音がちょっと怖いAグループの試合を見てみると、打球がネットに当たって相手コートに入ると「ごめん」と謝っている。そのとき私たちの胸に去来した「マナー」「スポーツマンシップ」「武士道」「わざとじゃないのにやって謝るようなことをわざとやって、しかも喜んでる俺たちっていったい……」「人として」「世情」といった感情はともかく、あの熱の冷め方だけは忘れられない。思い出である。


スローカーブを、もう一球 (角川文庫 (5962))

スローカーブを、もう一球 (角川文庫 (5962))

*1:まあ、Bグループ内には「回転」という概念がなかったからこそできたのだろうけれど