この世のどこかに必ずいるという拡張子の付かない彼女と(第六回萌理賞小説部門雑感)
sirouto2さんのようなスルー力の高い人ばかりに講評させてはおけぬ、ここはひとつ常日頃からスルー力不足に悩むわたくしめが講評を、というのはもちろん嘘で、ある画像を張ってみたくなったのでそのついでに全作品の感想を書いた。失礼があったら失礼。
- 『炬燵』
「結婚しようって言ったら」「離さないで暖めてくれるのなら」「浮気すんなよ」「君が暖かいの知ってるから」という最後のやりとりはやや強引だが、全体的に良い雰囲気の作品である。
- 『彼女といれば、心はいつも暖かいまま。』
方言に弱いので好み。男の「無邪気に言われりゃ」「おかげで懐は寒くなっちまったよ」などの威勢の良い表現も微笑ましい。
- 『その手の温もり』
萌理賞。隙のない作品だと思った。「あの事故」という表現から
を思い出した(他意はないです)。
- 『Silent Thirty Seconds』
次点。画が浮かびやすい感じで好感が持てる。欲を言えば後半の「彼女」のギャップを示す描写をもう少し……と感じた。
テンポが良い。しかし読解力不足な私にはどうにも画が浮かばなかった。あまり深く考えずに文章のリズムを楽しむ作品なのだろうと思った。
- 『冒険』
題名と内容うんぬんではなく、要は「女の子」との再会が偶然だったのかがわかりにくいのが問題なのだと思った。それ以外は悪くなかっただけにもったいないと感じた。
- 『春には早すぎる』
次点。設定が設定だけに手堅い作品である。「――くんは学校でモテるでしょ?カワイイし」「そ、そんな事ないです。…女と喋んないし」という伝統芸的な会話をサラリと入れてくるあたりもポイント高い。
- 『の・ぞ・き』
特別賞(腐賞)。しっかり騙された。オチを踏まえて読めば、後書きに「ホモがきらいな女子なんていません!(AAry」とあるように、いかにも「腐」な作品だなと感じた。納得の受賞。
- 『流れ星を掬う』
佳作。昭和というか大正というか明治な感じが素敵である。確かに佳作な感じ。
- 『つめたいみち』
佳作。ラスト一行は姉妹の明るい前途を感じさせるが、それまでがどうにも暗いので全体的に暗い。だがそれがいい、のかもしれないが。
- 『お流しします』
「別に作家と編集者(ですよね)じゃなくてもよくね?」とか「新鮮な温泉にあえなくなるてどういう意味?」とか思ったが無粋だろう。
しかしどういうわけか「おながしします」を変換すると「男流しします」となるのはどういうことだIME。
- 『うさぎの観光案内』
詩的である。地の文(?)まで「頭イカレタ少女」と書いちゃってるのはどうよ、と思うがそれも時代の流れなのだろう。
- 『溢れ出る』
「博士と助手」という題材。もっと助手について踏み込んだ記述があればと思った。
- 『はいちゃく!』
特別賞(腐賞)。自作。先週の『ハチワンダイバー』最終ページのハシラ「揉むや、揉まざるや」にインスパイアされ、あとは条件の「美少女または美少年」を腐女子と絡めて一丁あがり、しかしどうにも狂気が足りなかったという作品。
あと、「あばずれめ」は「一度は女に言ってみたい言葉第一位(国勢調べ)」である「この売女」にしたかったのだがそれはどうかと思ったのでやめた。(参考画像↓)
- 『当世浮世風呂』
佳作。設定が設定だけにこれまた隙が無い。完成度が高いと思った。
- 『人肌恋しい季節だから』
なんだろう、と考えたのだけどこれ?結局何なのかわからなかったのが残念だった。もう少し手心的なものがあっても良かったのでは。
- 『ひとり歩きをする時は』
突き放して書いてしまえばただ女の子が歩いて帰るのを描写しただけなので、良くも悪くも安定している。そこを読み手がどう感じるかだろうと思った。
- 『学校帰り。』
真っ当な作品だと感じた。だが、もっと色々な要素を詰め込んでも良かったのではと思った。
- 『冬のあやかし』
萌賞。萌賞の名に相応しい作品だなと思った。それはそうとsirouto2さんの選評「入賞は萌+理の二要素が必要」がスマッシュヒット。
- 『Fallin'』
理賞。大変よくできているなと思った。
- 『Who's Who of the Gods』
次点。なんというか、作者と色々共有できてればもっと面白く読めたのだろうなと思った。固有名詞とか。あと、萌えは宗教だと思っておくとアレです。
- 『拾バニーガール譚』
ラストの処理というか、主人公を女性(「私はスカートの裾を翻して」だからそうですよね)にする必要があったのかなと感じた。
あと、角を曲がったところで女の子とぶつかるのではなく、4トントラックとぶつかるという新ジャンル「即死」を考えたのだけどダメだと思った。
- まとめ
「まとめ。そうねえ。『竹易てあし漫画全集 おひっこし (アフタヌーンKC)』読んどけということしかないんじゃないの」
「そうですね」
- 作者: 沙村広明
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/06/19
- メディア: コミック
- 購入: 20人 クリック: 168回
- この商品を含むブログ (188件) を見る